(続き。)
アルトの第一声で始まる二重フーガはどのパートも主役になれて
歌っても聴いても楽しい。
この部分に関してはレッスンでもリハでもあまり注意を受けないが、
みんなの完成度が高いからなのか、或いは全パートとも
歌詞と旋律が違い、指導が厄介だからかはわからない。
フーガの後は、バス→テナー→アルト→全員と歌い継いでいく部分。
「ブリューデル!」と2回呼びかける場面では、
2度目はより強く感動的に歌うようにとの指示があり、
本番では皆しっかり意識して歌っているのが分かった。
終盤の「ザイドウムシュルンゲンミリオーネン〜」は、
かなりテンポが速い。
一万人の第九に出始めてから、第九のCDを幾つか
図書館で借り家で聴いたが、この部分に関しては、
佐渡さんの指揮はどのCDよりも速い気がする。
去年は本番で突然リズムが分からなくなってしまい、
思うように歌えず悔しかったので、今年は何とか歌いきろうと
個人的に緊張感を持って臨んだ。
とにかく指揮を凝視し、自分でしっかりとリズムを刻んで歌うこと。
他のパートを聴きながら漫然と歌ってしまうと、
広い会場内で音速のタイムラグもあり、混乱してしまうからだ。
そのことを意識するだけで、今年は自信を持って
歌い上げることができた。
参加1年目から使っている楽譜には、レッスンで教わったことを
その都度書き込んでいる。
メモ書きは年々増え、また、毎年その部分を習うたび目にするので、
楽譜なしで歌う時でも、譜面と同時に鉛筆の走り書きが頭に浮かぶ。
今年の第九では、3ヶ月間のレッスンや佐渡練、前日や当日リハで
注意された事を思い出しながら、一つ一つ忠実に丁寧に歌うよう
心掛けた。
その結果、去年まで毎年感じていた、
“本番になるとソプラノが遅れて聴こえて気持ち悪い”
という感覚もなく、今までで一番しっかり歌うことが出来たと思う。
佐渡さんがこの年の第九のモットーとしていた“wildに”と
いう点からは少し外れていたかも知れないが、私個人的には
今までで一番上手く行った、5年目の成長かと一人悦に入っている。
今年も、フィナーレ「ゲッテルフンケン!」と歌い終わり、
拍手が鳴り止まない中、蛍の光の合唱へと移った。
1万人の合唱団と5千人の観客で振るペンライトの光は美しく、
達成感で胸がいっぱいに。
正直に言うと、自分の中では年々第九参加もマンネリ化し、
なかなかテンションが上がらぬ状態で本番に臨むこととなった。
しかし、こうして無事歌い終え、第九の練習と共に過ごした
9月からの充実した期間を思い出すと、あ〜これだから
第九はやめられないとやみつきになってしまうのである。
-----